乱れ咲き♂024


セイは
昔からそうなんだッ。


自分の手に
負えなくなってきたり

面倒臭くなると


そんなコトには
最初から関わらなかった、と
言わんばかりに

投げ出してッ。


完璧主義者のセイにとって

勝てない試合は
存在しないのと同じ。


小学校の運動会でも
そうだった。


自分より足の速いランナーが
自分と走ろうモノなら


靴の紐をわざと解いて
靴が脱げた演技をし

堂々とビリを走って
観衆の同情を買うという

とんでもない
ウルトラCまで
使ったりしてッ。


セイの悪魔っぷりを
知らない先生も保護者も

みんな

「よく最後まで頑張って
走ったわね」

セイの愚行を誉め称え。


「靴が脱げたりしなかったら
セイくんが1等賞だったのに」


クラスメイトの評価に

セイといっしょに走って
1等賞を獲った
俊足ランナーは

事実上
2等賞みたいな扱いを
受けていて

気の毒と言ったらなかった。


自分のプライドさえ
守れればいい、という

その徹底した俺様主義ッ。


他のヒトは
その美しい顔で騙せても

長年セイの傍で
そのヤリ口を見てきた私には

お見通しだッ。


セイは
バスルームのドアを開けろ、と
言っているけれど


それは
「俺にいい考えがある」って
意味ではなく

「どうせ叱られるのは
ジュナさんだ」って

恐らく
責任転嫁の設計図が
セイのアタマの中に
出来上がっているからで。


「トーコ!

開けないのなら
俺がこじ開けて入るぞ!」