セイだって
今そこにいる
婦人警官が怪しいって
わかってるだろうにッ。
まさか
この子を犯人に
さっさと引き渡して
それで事無きを得ようと
考えてるんじゃ
ないでしょうねッッ。
有り得るッ。
セイなら
そういう取引を
平気でしそうだッ。
「……」
自分の身が
取引の対象になっているとは
想像もしていないのか。
私のテーピングしている足に
ネックレスを巻きつけては
さっきから
ときどき
「おうううううう」
少女の残念そうな溜息が
漏れ聞こえてきてて。
…何をしてるんだろう。
「…ケンちゃん
鬼が探しに来たから」
静かにしようね、って
少女に小声で話し掛けると
もこもこ、っと
シーツが動いて。
どうやら
体勢を変えたらしい。
「……」
この子には
何の罪もないんだよね。
この子の母親と『彼』の間に
どんな事情があったにせよ
それは
この子には
どうしようもないコトで。
なのに
勝手に過剰な期待をされて
その生活を
こうして脅かされて…。
「トーコ、開けるぞ」
犯人からプレッシャーを
掛けられたから、って
犯人の思惑通りに
この子を渡してしまうのは
何だか
とっても理不尽だ。