カチッ。カチャ。
バスルームのドアが開いて
クラシカルなドアノブを握る
セイの彫刻のような手が
目に入ってくる。
「セイッ、あの…ッ!」
セイは
私のコトバを遮るようにして
バスルームに
カラダを押し込んでくると
私を自分の背中で
壁際に追いやるようにして
「どうぞ。お調べください」
って
警察のヒト達を
迎え入れた。
「……」
セイの背中で
私の視界が遮られていて
何が行われているのか
不安になる。
「トーコちゃんは
どうしてそんな格好を
しているのかな?」
オジサン刑事が
私のコートを持って
こっちを見ているのが
セイの肩越しから見える
鏡に映ってて。
「あの…それはッ」
言い訳も浮かばないまま
私は
しゃべり出してしまってた。
「そのコート
キロいくら、の
量り売りで買った安物だから
肌に当たると
チクチクするみたいでね」
セイのフォローは
ありがたいけど
キロいくらの量り売りの
安物ってのは
ひと言余計だッ。
「ひとりで
バスルームにいるんだから
ハダカでも構わないんじゃ
なかったのかな?」
…ごもっともッ。