セイは私達に背中を向け
部屋の奥に掛かっている
カーテンを少し開けて
窓から外を見ながら
電話を続けている。
「ええ。はい。確かに。
それで?」
セイは電話の向こうの
相手の言うコトに
返事をしているばっかりで
いったい
何の話をしているのか
見当もつかない、けど。
そのセイの表情から
私がツッコミを
入れられるような内容じゃ
ないんだ、っていうのは
わかった。
ジュナさんが
少女のアタマに絡んでいた
”数珠”を丁寧に解くと
少女の首に
3重にして巻き掛ける。
「これッ。
トーコに貰ったッ。
カブトムシのうんこッ」
…違いますッ。
「カブトムシ色の、でしょッ」
「おおう」
私に強く訂正され
少女が
びみょお〜に残念がったッ。
「そのガキ、どうしようかな」
いつの間にか
電話を切っていたセイが
おおきな声で
こっちに話し掛けてきた。
「どうしようか、って…」
言われてもッ。
ふさわしい選択肢が
見当たらない。
「さっきのカメラオトコに
そのガキ、引き渡したら
警察は
どんな反応するかな」
なんてッ。
「セイッ。
冗談でもそんなコト
言うモンじゃないわよッ」
「俺、結構マジなんだけど?」
セイは
カーテンの隙間から
外を覗き込みながら
溜息をついた。