「ヒメミヤの奥さんが
黙秘を通した為に
身の潔白を証明するコトが
出来ずに
死んでしまったんだよね。
看護師さん」
「……」
「アンタが
口を割らせるコトができれば
救えたかもしれない命、だ」
「だからって…!」
婦人警官が食い下がる。
「そうよ!
ヒメは
黙っていたワケじゃないッ。
ショックで何も
考えられなかったから!」
『彼』の死が
訪れるその瞬間を
何度も何度も
再現を求められ
「それだけでも
充分、残酷なコトなのにッ」
ましてや
身に覚えのない
遺産のコトなんて
責められても
「何も答えられるワケ
ないじゃない…ッ!」
ジュナさんの怒声が
婦人警官のセリフを遮った。
「…あのときは
有能な弁護士が
すぐに彼女の為に
用意されて
未成年だから、と
満足な取り調べの時間も
与えらなかったよ」
その分
取り調べが
看護師さんひとりに
集中するコトに
なったとしても
それは
ヒメミヤさんの
奥さんのせいではないよね。
看護師の彼女の死を
ネットの書き込みという
卑劣な方法で
無責任に汚し続けた
オトコは
裁判になっても
たいした罰は与えられずに。
証言を拒んだオンナノコは
社会的成功者のやさしい夫と
子どもにも恵まれて
誰もが羨むしあわせを
絵に描いたようで。
「許せなかったんだろうね」
って
セイがポツン、と呟いた。