おやっさんが
内ポケットの中から
出したのは


まっ黒な携帯で…!!


「…ヒメのじゃ、ない」

ジュナさんが
あっさり証人になった。


ほらほらほら〜ッ。

むやみに他人様を
疑うんじゃありませんッ。


「失礼しましたッッ」

私はソッコーで
セイにアタマを
下げさせるッ。



「…ポケットに
もう1台、入ってるよね?」


「セイッ!
もういい加減にしなさいッ」


私は
押さえつけていた
セイのアタマを

さらにテーブルの上に
押しつけたのにッ。


おやっさんは
ジャケットの内側から
白い手袋を取り出して

手慣れたカンジで
自分の手にハメると


「…これのコトかな?」


ポケットの中から

白いハンカチに
大雑把に包まれた

薄くてちいさな
ピンクのケータイを
引き出した。


「…え」

セイを押さえつけたまま

私の顔は引きつって。


「それ、ヒメの…!」


ジュナさんの証言に

カラダがさらに
凍りつきますッッ!!!


どうして

おやっさんは
そんなモノを

持ってるんですかあああああ。


「ママのッ!」

返せ、と
少女がおやっさんの手から
奪い返そうとして


「これは
大事な証拠品だから」


触らせるワケには
いかない、と

おやっさんは
またケータイを
ポケットに押し込んだ。


「証拠品?」


セイが私の手を
自分のアタマから
払い除けながら

おやっさんに
問い掛ける。


「さっき
このホテルの
VIP専用フロアで

逃走中のオトコを
追いかけているときに
拾ったんだよ」