セイはカラダを
おおきく反転させて
ソファーから
身を乗り出すようにして
おやっさんの
背中越しに
ニッタさんから
ソレを受け取った。
「そのコート…!!」
ジュナさんが
おおきな声を上げて。
「あ、やっぱり
そうだったんだ?」
セイが
ジュナさんの反応を見て
嬉しそうにする。
「…このコート着て
トーコと向かい合って
立ってみてくれるかな?」
「……」
…その
見覚えのあるコート。
私はおやっさんの
足元に目をやった。
女性モノかと
思うくらい
細めの
黒い汚れた靴。
警察官にしては
小柄な
よく警察官試験に
通ったな、ってくらいの
低いその背丈。
「仮面用の紙と
ヘリウムガスも
ホテルのヒトに
用意して貰った方が
いいかな?」
「……」
私の顔を壁に打ちつけた
犯人…!!!!
思わず私は
自分の鼻を
両手で押さえるッ。
「…まさか
部下に裏切られるとは、な」
おやっさんが
ちいさな溜息を洩らすと
「部下の信頼を裏切ったのは
アンタの方じゃないの?」
セイが
冷たく言い放った。
マヌケな刑事なハズの
ニッタさんが
「メールアドレスを
俺達から訊き出したり
いいタイミングで
姿を現わしたり」
きっと裏で誰かが
指示を出してるんだ、って
すぐにピンときた、って
セイは机の上を
片づけ始める。