「…ニッタの銃の腕は
オリンピック候補生に
選ばれる程だからな」
おやっさんは
イスの上に立つ少女を
素早く
自分の盾にして。
「わかっているのなら
その銃を今すぐ
下ろしてください…ッ!!」
ニッタ刑事の声が
空しく響いた…。
「足首を狙って
打ち抜いちゃえば〜?」
セイが
私のアタマを
長い腕で押し退けながら
要らぬアドバイスなんぞ
してッ。
「この距離だと
確実に骨が粉々に砕けるから
おやっさんの歳だと
まず間違いなく
一生、車イスだよね〜♪」
なんてッ
セイってば
ど〜ゆ〜つもりッ!?
「……」
ほら見てよッ。
アンタが
そんなコトを言うから
ニッタさんは
どこも
狙えなくなってしまった
じゃないッ。
「…おやっさん。
要求は何ですか?」
ニッタ刑事が
静かに銃を下ろして。
婦人警官も
それに倣った。
「…署に送ったオトコを
釈放して
ここに連れて来い」
「それはできませんッ!!」
生真面目な婦人警官が
声を荒げると
チャッ。
おやっさんの持っている銃が
少女の頬を
さらにえぐって。
「……」
自分の頬に当てられている
硬いモノに
焦点を合わせようと
少女の黒目が
右側に集まった。
「ケンちゃんッ!!」