パンッ!
勢いよく
ブーメランのように
スライドしながら
飛んでいったクッションは
コトもあろうか
おやっさんの顔面に
ヒットしてッッ!!!
有り得ないでしょおおおお。
ニッタさんが
素早くおやっさんを
床に抑え込むッ。
「うぐむ?」
少女が口に
拳銃を咥えたまま
ぴょこん、っと
イスから飛び降りて。
「お嬢ちゃんッ」
婦人警官が慌てて
少女の口から
銃を抜き取ったッ。
「…信じられないッ」
セイが
異星人を見るみたいに
おおきな目を
さらに見開いて
私を凝視していてッ。
「わざとじゃ、ないモンッ」
「わざとじゃないから
問題なんだろうがッッ」
ひとつ間違えてたら、って
セイが
本気で怒ってるッ。
「…ったくッ。
ヒトがせっかく
慎重にコトを運ぼうと
していたのにッ」
前のめりになっていた
上半身を
セイは
ドカッ、っと
ソファーに沈み込ませると
「ほんっとにッ
バカトーコなんだから…ッ!」
私に当てつけるように
深〜い溜息を吐いた。
「で、ニッタさん。
そのヒト、どうするの?」
「えッ」
セイの思わぬ質問に
ニッタさんの目が泳ぐ。
「ご老体なんだし
飛び降りれるような
手頃な窓もないし
もうどこにも
逃げ隠れ出来ないでしょ」
「……」
セイのコトバに
ニッタさんは
おやっさんのカラダを
開放した。
「…おやっさんッ」
ニッタさんの声が詰まって
それ以上
コトバにならない。
ドアに自分の体重を
預けるようにして
ニッタさんは
座り込んだまま動かない
おやっさんの姿を
見下ろしていた。