「…いい娘だったんだ。
生まれたときから
よく知っている」
おやっさんが
か細い声で話し始めた。
「学生時代から
ボランティアにも熱心で」
肩手が不自由だった
ウチの母親も
本当に
世話になっていた、って
おやっさんは
淋しげに微笑んで。
「愛情深くって
みんなに可愛がられていて」
彼女に感謝の意を述べる
人間はいても
彼女を悪く言う奴なんて
どこにもいなかった。
そんな彼女が
「こんなつまらない騒動に
巻き込まれて
どうして
見知らぬヤツらの
中傷の対象になど
されなければ
ならないのか…!」
憶測が飛び交い。
想像が
さも現実にあったコトのように
語られ
肉づけされていって。
彼女は
もう墓の下で
何も反論できないというのに。
ネットの世界。
限度知らずに
際限なく繰り返される
言われなき中傷。
「許せなかった…!」
書き込みをしていた
あの中傷魔に
おおきな刑事事件を
起こさせて
二度とネットなんか
できないように
「一生監獄に
入れるつもりだったんだ?」
セイが
おやっさんの気持ちを
代弁した。
「…一生、監獄に…」
無期懲役刑。
殺人でも起こさない限り
そんな判決が
下るワケもなく。
「……」
ニッタさんの顔が
おおきく歪む。