スプリング♂001
セイは
冬の寒い日に生まれた。
いつもどこか
ヒンヤリとした肌をしている
セイのイメージに
ピッタリと言えば
ピッタリではあるのだが。
早生まれにしては
背が高めで
いろんな意味で
成熟が早いヤツで。
アタマもカラダも
いっしょに育った
ひとつ年上の
私なんかより
ずううううううっと
先を行っていた。
「同じモノを食べて
同じ両親に
育てられたというのに」
血は水よりも濃い、とは
いうけれど。
「遺伝子って
やっぱり大事なのかな、って
つくづく思うッ」
「それは
模試の結果が悪かった
言い訳のつもりか」
学習机の上。
突っ伏している私のアタマを
問題集でポコン、っと叩いて。
「中身が空っぽだと
さすがにいい音がするな」
…イジメっこッ。
次の模試に向けて
血が繋がらないとはいえ
”弟”のセイが
”姉”の私の勉強を
見てくれているのだけれど。
「受験まで
あと1年もないのにさッ。
今からどんなに
知識を詰め込んだって
間に合う訳ないんだから」
「トーコはおバカなクセに
そういう結論を出すのだけは
人一倍早いのな」
「……」
「ほら、まだ机に向って
30分も経ってないんだぞ。
俺が怒り出す前に
次の設問に進め!」
ポコンッ!
…セイがまた
私のアタマを派手に鳴らした。