セイの長い指先が
私の視界の端っこに

存在感を増していて。


問題集の上

私にヒントを指し示す為に

ときどき
忙しなく動き回ってる。


手の甲に比べて
指がすんごく長いんだ。


特にその
第一関節から先の
長さと言ったら

まさに理想の黄金比。


「ほら、また
ケアレスミスしてる」


…あ。


「今度つまんないミスしたら

1時間ベッドの上で
俺に奉仕して貰うからなッ」


「……」

以前なら

言い返してた
セイの下品なジョークも

今は無視するのが
精一杯で。


おかしいな。

どこから
こんな風に
なっちゃったんだろうか。


「こらッ、何を考えてるッ!」

「痛ッ」


セイに長い指で
今度はオデコを弾かれたッ。


「やる気、あんのか!?」

セイが
回答欄をトントン、と叩いて

何だ、これは?、と

呆れてる。


「あ」

回答欄から
数字が
おおきく逸脱していてッ。


「俺がアタマを
叩き過ぎたから

とうとう文字すらも
真っ直ぐに
書けなくなったか」

って。


ヒトを
パンチドランカーみたいに
言ってる割に

パコパコ、と

私のアタマを
また、叩いてるッ。


「セイッ!

セイの部屋で
ケータイ鳴ってる
みたいだよッ」


「…ふんッ!」

ゴングに救われたな、って

セイが
私の部屋から
自分の部屋に戻っていった。