ヘタに電話に出てしまって
嫉妬深いセイが
戻ってきたりしたら大変だッ。
「……」
しつこい。
「……」
何故鳴りやまない。
「……」
セイも
どうして戻ってこないッ。
「……」
私は
ケータイを机の上に置いたまま
セイの部屋に
セイの様子を覗きに行った。
「セイ?」
私の姿に気づいたセイが
【しばらく電話
かかりそうだから】
紙に書いて私に見せる。
データがどうの。
オッズ比がどうの。
…聴き取れない
難しい専門用語を
しゃべっているから
研究室からの電話なんだろう。
私は無言で
セイに頷いて
自分の部屋に戻るコトにした。
「…まだ電話が鳴ってるよッ」
…留守番電話になっても
めげずに掛けてくる
この執拗さが
ちょっとコワイッ。
「…もしもし?」
どうせ
たいした用ではない
とは思うッ。
だけど。
一応、世話には
なってるし。
用件くらいは
訊いてあげるべきなのかッ。
『あッ、トーコちゃんッ!?
セイくんは
今日ッ機嫌悪いのかなッ』
…やっぱり。
「セイは今、研究室のヒトと
打ちあわせをしていて
ケータイが
塞がっているだけでッ」
居留守を使ってるワケでも
何でもありませんから
安心してください、って
どうして
私がフォローなんて
しているんだかッ。