私はふたりの会話の
どさくさに
そお〜っと
その場をバックレようとした。
のにッ。
「まだ話は
終わってなくてよッ」
カラカラと
おおきな下駄の音が
私の後ろを
追い掛けてくるッ。
「セイのコトは
セイに言ってくださいッ!」
「さっきから
セイ、セイって
アナタ
何の話をしてるワケッ!?」
「え」
大正ロマンのひと言に
思わず足が
止まってしまった。
「…セイの恨み話じゃ
なかったんですか?」
「何よそれッ!?」
大正ロマンが
くっきりアイラインの目で
私を睨むッ。
「……」
でも。
だとしたら
このヒトは
誰の話をしているんだろう。
もしかして
私が前に交際していた
「クボ先輩…とか?」
「クボッ!?」
大正ロマンの眉間に
さらに深いシワが寄ったッ。
…違うんですねッ。
でも、私ッ。
他に身に覚えのある
殿方なんて
いませんけれどッ。
「あくまでも
シラを切る気ね!」
大正ロマンが
メガネっこに目配せすると
「先生〜。
いい加減にしましょうや〜」
文句を言いながらも
メガネっこが
車を私達に横づけする。
「助手のクセにッ
私のするコトに
いちいち口を
出してくるんじゃないのッ」
「きゃッ!?」
私は大正ロマンに
車の中に押し込まれた!