「ななななな何ッ!?
何するんですかああああああ」


「あんまり
抵抗とかして

このお方の機嫌を
損ねない方がいいですよ〜」


でもッ!

でもでもでもッ!!

これって
誘拐じゃないでしょうかッ!?


「私ッ!
学校がありますからッ!!」


「あら。

学校なんて
行ってどうするの?」


えッ。


「学校なんて

1日くらい
行っても行かなくても

人生変わったりしないわよッ」


「出席日数が
足りなくなったら
落第ですからッッッ!!!」


「大袈裟な子ねッ」


後部座席。

私の隣りに座ってる
大正ロマンが

私の頬っぺたを
引っ張ったッ。


におい袋の
伽羅の香りに
むせ返りそうになる。


「アナタに
ぜひとも逢いたい、と
おっしゃってる御仁が
いらっしゃるの」


ゴジン?


「お忙しい方だから

アナタのスケジュールに
合わせるワケには
いかないから」


文句は
言わないで頂戴、って。


そういう論理って

一般常識として
あり、なんですかッッ!?


アタマには
反論のコトバが
次から次へと
浮かんでくるのに

この大正ロマンの
迫力の前に

私は何も言えないまま。


空色のてんとう虫は
私達を乗せて

朝の国道を
ひた走っていった。


相手がオンナのヒトで

どこか憎めないキャラのせい
だからなのか。


それとも

連れ去り、誘拐の経験が
ヒトより豊富なせいなのかッ。


そんな分析をする間もなく

あっという間に
車は目的地についた。