「ほら、降りなさい」
修学旅行で行った
時代村で見た奉行所のような
でっかい門構え。
「こっちよ」
大正ロマンに連れられて
ふたり中に入ると
どこまでも
緑が続いていて。
さっきから
すれ違うのは
キレイに着飾った女性と
スーツに身を包んだ男性の
組み合わせ。
庭をふたりで
散策しているようだけど。
その他人行儀な距離感から
推測しても
彼氏と彼女では
なさそうだった。
だけど。
こんなに
たくさんのヒトが
いるのなら
安心だ。
妙な場所に
閉じ込められる前に
逃げ出せたら、とか
考えていたけれど
その必要は
ないのかもしれなかった。
「あ、花嫁さんだッ」
綿帽子を被って
鶴の刺繍が入った着物で
池に架かった橋を
花婿さん達と渡っている。
「今日は大安吉日だから」
結婚式もお見合いも
この寒さの中
朝から
ひっきりなしよ、って
大正ロマンが笑ってて。
「もしかして、ここって…」
いわゆる
結婚に関する総合会館…?
…お見合いかあ。
ど〜りで
ぎこちない男女が
多いワケだッ。
年齢層がびみょ〜に
高いのも
そのせいなのか。
「ほら!
花嫁を見かける度に
いちいち
足を止めてないで!」
さっさと歩きなさい、って
大正ロマンが
エラそうだッ。
だいたい
さっきから
どうして私に対して
命令口調なんだろう。
逢わせたいヒトがいるなら
もっと低姿勢で
”お願い”するのが
普通ではないのだろうかッ。