スプリング♂004
セイってば
何を考えているんだろうッ!!
目の前で
見知らぬヒトに
私が連れ去られるのを
楽しそおおおおおに
見送っててッ。
信じられないッ。
「ほらッ!」
観念して
しっかり自分の足で
歩きなさい、って
拉致犯の大正ロマンに
凄まれた。
しあわせそうに
記念写真に納まっている
ヒト達を横目に
日本庭園を小走りする。
いったい私達は
みんなから
どういう風に
見られているんだろう。
「ちょっとここで
待っててくださる?」
日本庭園の中にある
赤い和傘の下のベンチに
私をひとり残して
大正ロマンが
立ち去っていったけどッ。
…私が逃げ出すとか
思ってないのかな。
「……」
逃げますよ?
ホントに
逃げちゃいますからねッ。
私はそ〜っと
腰を上げようとして。
「お嬢ちゃん」
コートの後ろを
誰かに引っ張られッ
「きゃッ」
ベンチに尻もちを
つかされたッ!!!!!
「なッ…!」
「お嬢ちゃん。
ここに置いておった指輪を
知らんかね?」