スプリング♂005


しゃなり、しゃなり、と歩く
大正ロマンの後ろを


恋人同士のフリをした

タカヒロさんコト
ねずみ〜らんどの先生と

ふたり
手を繋いでついていく。


手を繋いでいるのは

きっと
私が逃げ出すのを
恐れての行為

だったのだろうけど。


…こんなトコロを
セイに見られでもしたら
大変だよおおお。


先生だって

セイが
ああいう気性だって

よく知っていると
思うんだけどッ。


私は
私の半歩先を歩いている
ねずみ〜らんどの先生の顔を

チラリ、見た。


正面から見るより
斜め後ろから見た方が

彫刻みたいな
シャープな輪郭が
より強調されて

ハンサムだ。


お金は持ってるし。
人脈も広いし。

美容整形の大病院の
跡取り息子で

お医者さまで。

過去にオンナの影もない。


好きなヒトには
どこまでも献身的で

一生懸命で。


ときどき

自分を見失うと

声が裏返ったりは
するけれど。


ダンナさまにするには
申し分のない条件が
揃ってる。


だけど。


さっきから
私の指先に触れてくる
シルバーのブレスが

セイが持っているのと
お揃いだって

気づいちゃうと


やっぱり
このヒトは

そ〜ゆ〜嗜好のあるヒト
なんだ、って

現実に引き戻されて。


…なんか
勿体ないよね。