「怪我?」
「いいえ〜。
私ッ、目が悪くって
見間違いしてたみたいで〜」
ホント、恥ずかしい、って
そんなオオボラ吹いて
私の陰に
隠れるんじゃないいいいいッ。
「タカヒロさんの
お見合いパーティーに
参加される方かしら?」
「いいえ〜。
先輩の結婚式に
来たんですけど〜。
なんかお日にちを
勘違いしちゃったみたいで〜」
…どうして、いちいち
舌っ足らずに
語尾を伸ばして
しゃべってるんだろう。
セイってばッ
いったいどんな
キャラクター設定を
しているんだかッ。
さっきは
どこの演歌歌手かと
思ったけれどッ
このしなだれかかった
怪しい流し目は
まさに大衆演劇の
女形のようでッ。
「…タカヒロさんとは
どういう
お知り合いなのかしら?」
大正ロマンの詰問にも
まったく動じる様子はなく…。
「…先生の病院で。
その…。
目と鼻とアゴを少々…」
ってッ。
もしもしもしッ!?
それはいったい
ど〜ゆ〜設定なんですかッ。
「ああ。患者さんだったのね」
大正ロマンは
セイの顔をマジマジと
覗き込んできてッ。
「さすがタカヒロさん。
大先生の跡取りだけあって
いい腕とセンスをしてるわ〜」
…セイの美しさに
感心しているッ。
「なんか
病院のいい宣伝になるから
パーティーに
参加しないか、って
誘われたんですけど。
お見合いでしたら
遠慮させていただいた方が
いいですよね〜?」
って。
参加する気
満々で来たんだろうがッッ!