「……」
ほら、見てッ。
大正ロマンが
訝しげにこっちを見てるッ。
「…まあ、いいわ。
アナタも参加なさって」
ありがとうございます、って
懐っこい笑顔で
セイが
大正ロマンの後ろをついて
洋館に入っていくけれどッ。
…大丈夫なのかなッ。
半ば
その場にボー然と
立ちつくしていた私に
「え〜っと
トーコさんでしたっけ?
アナタも早く
いらっしゃいな」
って。
私とセイは
今、知り合ったという設定
なんですねッ。
「ほら、早くう!」
振り袖を着たセイが
私の方へ
駆け寄ってきて
私の腰を
ガシッ、と掴まえて
離さないッ!
「…先に言っておくが。
俺の計画を
ぶっ壊したりしたら
ただじゃおかないからな」
って
ニッコリ笑顔で
耳打ちするのは
ヤメテクダサイッ。
妖しい色香を
振りまきながら
セイが私の手を引き
洋館の廊下を
先に進む。
…さっきの
ねずみ〜らんどの先生とは
おおきさも
感触も
まったく違う
セイの美しい手。
アンティークな家具で
飾られた細い廊下。
洋館のハズなのに
どこかジャパニーズサイズで。
「あ…」
家具の引き出しの取っ手に
コートが
少し引っ掛かった。