落ち着いた声で
私に救いの手を
伸ばしてくれたのは
なんとッ
あの大正ロマンでッ。
「……」
私は制服の胸ポケットから
学生手帳を取り出してッ
ジイサマの目の前に
突き出したッ。
ジイサマは目を凝らして
じっくりと
私と学生証の写真とを
見比べて
「……」
納得がいかないって目で
私を見ていますけどッ。
全ては
自分の孫が
絶対に男色家だ、と
決めてかかっている
その目の曇りのせいだ、と
思いたいッ。
「ジイサマ。
もう、その辺で
勘弁してくれるかな?」
「!!」
その声に反応するように
入口から私達に向かって
一直線に道ができて。
「タカヒロさん!」
こっちに真っ直ぐ
歩いてくる先生に
大正ロマンが
小走りに近づいていく。
「みなさん
お待ちかねでしたのよ!」
少しスネねるような
その言い方が
やけにオンナのヒトしていて
ちょっと意外だ。
「申し訳ない。
ちょっと
知りあいを見かけたモノで」
誰も理由など
訊いてもいないのに
言い訳をしてしまうのは
ウソがつけないヒトだから
なのか。
そんな先生の言い訳を
遮るように
「ご紹介しますわ」
先生の腕を取って
傍にいた女性
ひとりひとりに
紹介を始めててッ。
「何だか自分の彼氏でも
紹介しとるようじゃのう」
「……」
おじいちゃん。
”彼氏”なんてコトバを
よく知っていましたねッ。
私と目が合って
にへら〜、と
ジイサマが
私に笑い掛けてくるッ。