スプリング♂007
キレイに着飾った
女性達にぐるりと
囲まれるようにして
私は
ねずみ〜らんどの先生に
エスコートされる。
「まず、こちらが…」
左手にいた女性から順番に
先生がフルネームを口にして。
「ヴァイオリンと
乗馬が得意だそうだよ」
先生のアタマの中には
女性のフルネームどころか
趣味、特技まで
インプットされて
いるらしい。
タカヒロ”さま”に
覚えて戴いて光栄だ、と
言わんばかりに
女性達が
舞い上がっているんだけれど。
…女性に興味がないクセに
ひとりひとりの
プロフィールを
ここまでしっかり
記憶しているのは
美容整形外科とゆ〜
仕事柄が為せる技なのかッ。
女性の扱いのツボを
心得ているというか。
しかも
そんな清廉潔白な笑顔を
みんなに安売りして。
…さすが
40歳になるまで
周りを騙し続けられただけ
あります、ですッ。
とても
女性に興味がないなんて
思えませんぞッ。
だけど
そんな先生の説明に
わざわざ補足をしていく
オンナが1名ッ。
なんとか銀行の
頭取令嬢とか。
華道の家元の
長女だとか。
新聞社の会長の
お孫さんとか。
いかにも
上流階級のお嬢さま、って
カンジの
肩書きばかりで。
大正ロマンのやるコトは
イチイチ嫌味ですッ。
ひと通り
女性を私に紹介し終わった後
先生が私の背中を
少し前に押し出して
「トーコちゃん。
僕の大事なヒト」
みんなに私を紹介し始めた。