セイが
黒髪のカツラを取って
投げ捨てて。


「こんな茶番に
つき合ってらんねえ!」


私の腕を
強引に引っ張って

つかつか、と
大股で早歩きする。


着物の裾が
おおきく捲くれ上がって

長い足が
肌蹴た襦袢から
妖しく覗き見えていた。


「セイくん。

その格好で
家に帰るつもりかい!」


先生の声を無視して

セイは
歩き続けてる。


セイに掴まれている腕が
痛い。


でも
そんなコトを
口にするなんて

とてもじゃないけど
できないようなオーラを

セイは醸し出していた。


「洋服も財布も
僕の車の中に

置きっ放しに
なってるんじゃないのか!」


「……」

セイは何も答えずに
そのまま

私を連れて
部屋を出てしまう。


「…セイッ」

「……」

「あのッ、私ねッ」

「……」


建物を出て

日本庭園を
突っ切ってゆく。


すれ違うヒト達は
皆、しあわせ顔なのに。


どうして
こんなコトに
なっちゃったのか。


「あッ」


つる草に足を取られて

私はヒザ小僧を
擦りむいた。


「…何やってんだよッ」


セイが
やっと足を止めて

私に口を利く。


「まったくッ。

お前は隙だらけの
おバカなんだからなッ」