そんな風に
私に慰められるのも

セイにとって

かえって屈辱に
受け取られてしまいそうだ。


セイが
自分の油断だった、と

いつもいつも
自分を責めずには
いられないのは

セイが普通のヒトより
遥かに賢いからで。


自分があのとき

こうしていれば
こうならなかった、って

悔やむ気持ちが
ヒトより
おおきのはわかるけど。


それにしたって

あまりの
落ち込みようだ。


セイが
必死に押さえている
自己嫌悪の感情を

何かの弾みで
暴走させるのが怖くて


私も
ただ黙って俯いているのが
精一杯だけど。


ときどき

セイの手を
ぎゅうう、っと握って

セイの気持ちを
探ってみたりして
みるのだけど


セイの手には
反応らしい反応もなく。


大正ロマンの車に
置きっ放しにしている
学校のカバンを

どうやって
返却して貰うべきか、とか。


セイの振り袖は
セイのカバンと服と
交換なのかな、とか。


話すコトなら
たくさんあったのに。

私は
何ひとつ
切り出せずにいた。


トボトボと
駅に向って歩くふたりに

パッパーっと
またクラクションが鳴って


「乗っていかないか!」


その声に
私は勢いよく顔を上げる。


「トーコちゃんのカバンも
預かってきてるから」


真っ白な高級そうな外車を
私達に並走させながら

ねずみ〜らんどの先生が
窓から肘を出すようにして

私達に話し掛けてきた。