いつものセイなら
威勢良く
どのツラさげて
話し掛けてきてるんだ、って
先生に
言いたい放題
ぶつけているトコロだろう。
なのに。
セイはチラっと
先生を見ただけで。
私達に声を掛けてきていた
ナンパな車達相手と
同じように
無視し続けていて。
…それが
かえって恐かった。
「トーコちゃん。
さっきはごめんね。
ちょっとセイくんを
困らせてやりたくなって、さ」
「…はあ…」
先生は
私に言い訳しながら
セイに釈明していたに
違いなかった。
「セイくんが
見合いを壊してくれる
と言うから…」
出るつもりもなかった
見合いにも
顔を出すコトにしたのに。
セイってば
寸前でバックれたらしく。
「セイくんの姿が
見えなくなって
ああ、セイくんに
ハメられたな、って
裏切られた気持ちで
淋しかったよ」
先生の車が停止する。
先生の車を
置き去りにするようにして
セイは足を止めるコトなく
同じペースで
歩き続けた。
「…セイ、カバンだけ
貰ってきてもいいかな?」
そっと
セイの顔を窺ってみる。
「……」
セイが初めて顔をあげて
力ない表情のない顔で
私をじっと見ていて。
「あのッ、ほら
先生が…」
私は沈黙を嫌うように
コトバを続けた。