先生は
セイに裏切られたから
つい仕返しを
してしまったのだ、と
言い訳してるけど。
セイが実は
自分のコトを信用して
ココロを
開いていたんだ、って
自覚を持つには
あまりにも
セイの態度は
そっけな過ぎたのかも
しれない。
私から見れば
オトナに対して
いい子ちゃんの仮面を
被り続けているセイが
ヒトに期待しないセイが
地の自分を
包み隠さず出していた
数少ないひとりである
先生からの
この、まさか、の裏切りは
自分の甘えを
まさに戒められたようで
あったのだろう。
「甘えてるんじゃない」
与えて貰うばかりで
何も返さなくても
相手は満足している。
傍にいてやってるだけで
ありがたく思われて。
与えるだけのヒト。
求めないヒト。
自分にとって
そんな都合のいい
相手からの
思いもよらぬ
反旗に
傷ついてしまった自分に
自分で驚いているのかも
しれない。
「セイくん、あのさ」
車を降りて
私達に追いついてきた
先生が
セイに声を掛ける。
「セイくんが
本気で
僕に結婚して欲しがって
たんだ、って
今度のコトで
よくわかったよ」
どんなに
煙たがられても
うっとおしがられても
困った時には
一番に思い出して
頼ってくれているのは
「僕のコトを
少なくても
特別な存在だと
思っていて
くれるからだ、って
思い込んでいたから、さ」
先生が
セイに背中に語り掛けてる。