「えッ。ちょ…!」
私は足をもつれさせながら
先生に車まで
引っ張られると
強引に
運転席に突っ込まれるッ。
「なッ!?」
さらに
先生は自分のカラダで
私を奥の助手席に
押し込めるようにして
運転席に乗り込むと
乱暴に車を
発進させたッ!!!!
「せっ、先生ッ!?」
「ごめん。
悪いようにはしないから」
私は不安定な助手席の下から
カラダを起こすと
シート越しに
車道に仁王立ちしている
振り袖姿のセイを
確認する。
「セイ…!」
「大丈夫。
セイくんのコトだから
じきに追いついてくるよ」
「でもッ!!」
セイはお財布だって
持ってないのに。
「セイくんなら
何とかするだろう」
落ち着いた先生の声。
私は初めて
先生のコトを
恐い、と思った。
ブレーキを
無理矢理押さえつけて
車を停めるコトだって
できた。
なのに
私が
それをしなかったのは
ふたりが
私のよく知っている
ふたりじゃなかったから、で。
こんな冷静さを
欠いた状態で
顔を合わせさせたりしたら
それこそ
何が起こるか
わかったモノじゃない。
ちいさくなっていく
セイの姿から
目を逸らすようにして
気がつくと
私は
シートに身を隠していた。
「…どうして
こうなっちゃうんだろう」