瞳からナミダが
溢れそうになるのを
必死で堪えていたのに。
びくッ!
先生の腕が
こっちに
伸びてくる!!!!
「トーコちゃん」
バックミラーを
覗き込みながら
先生がハンドルを右に切った。
「きゃッ」
「ほら、ちゃんと
シートベルトをして!」
先生の腕が
シートベルトに
伸びていなければ
私はきっと
顔面を強打していたに
違いなかった。
「…先生は
恋敵の私のコト
憎らしいとか
思ったコトは
ないんですか?」
「どうして?」
「…だって」
普通は
そうじゃないのかな。
自分の最愛のヒトが
他のヒトと
しあわせしてるのを
目の当たりにして
平気でいられる方が
おかしいと思う。
「僕は
セイくんの傍にいられて
セイくんの力になれて
セイくんの
一番の
理解者でいたかっただけ」
他には
何も求めない、って
先生は目を細めた。
「…セイは
素直じゃないし
甘えられる相手には
すぐ調子に乗っちゃうから」
「知ってる」
先生はそう
私に即答すると
そのまま黙り込んでしまう。
…セイが
先生に結婚を
考えさせようとしたから、って
セイが
先生のコトを
うっとうしがってるとか
いらないとか
そんなコトは
思ってもいない、って
私が言っても
ただの慰めにしか
聞こえないよね。