「2煎めは
また味わいが違うから」
先生がまた
急須にちょっとだけ
お湯を入れて。
…ゆったりとした
空気が流れてる。
「僕にとって
玉露は飲み物と言うより
食べ物みたいな感覚だから」
本来なら
お茶請けとかは
あえて
出さないんだけど、って
「黒豆の塩炒りと羊羹
どっちが好み?」
戸棚から
和菓子を取り出して
私に見せる。
「いえ、おかまいなく…」
遠慮する私に
「セイくんもテツオも
日本茶が飲めないから
いつもつまんなくてね」
羊羹なんか
なかなか減らない、って
先生が苦笑した。
「…セイは
羊羹とか小豆製品は
コーヒーといっしょなら
喜んで食べますけど」
「えッ。そうなんだ!?」
先生が思いっきり
驚いた顔をする。
「前に
京都の水菓子を出したとき
思いっきり
拒絶されたから
てっきり…」
「日本茶の苦いのが
嫌いみたいです」
「そうか。
そう言えば
あのときも
抹茶をたてて出してたっけ」
そうか
そうだったんだ、って
先生は
何度も何度も
嬉しそうに繰り返していて。
「……」
なんか複雑ですッ。
「…セイはそんなによく
ここに来てるんですか?」
思わず
意地悪な質問をしてしまう。
「…中等部の頃は
よくきてたかな」