初めてこの部屋に
やってきたのは

背中の火傷の痕の相談で。


「あのときのコトは
今でもよく覚えているよ」


健康診断に
ひとりだけ姿を現さない
オトコノコ。

学校には来て

授業は
ちゃんと受けているのに。


「何か事情でもあるのかと
思ってさ」


担任に相談しても

特に問題行動のある
生徒でもなく

むしろ
無遅刻、無欠席の
優等生で。


「健康診断に
顔を見せなかったコトを

担任の方が
驚いていたくらいさ」


問題がないのなら

それに越したコトは
ないけれど。


「念の為、自分の病院に
診察に来るように、って」

担任に託けて

学校を
後にしようとして。


渡り廊下を歩いている
美しい少年とすれ違った。


「すぐに
健康診断に来なかった
生徒だと直感したよ」


こんなに
独特のオーラのある少年。

一度会ったら
忘れない。


この学校の生徒は
みんな診察してきたから。


「思わず
声を掛けてしまった」


何だよ、校医さん、と

どこからともなく現れた
高等部の生徒に

あっという間に囲まれて。


「気がつくと
セイくんの姿は
もうなくって、さ」


あのときは
本気でビビった、って

先生がちょっと
苦笑してみせた。


…セイの従弟のカノンくんも
似たような話をしていたっけ。


いつもセイは

自分の周りを
上級生達で固めてて。


「自称、親衛隊とやらを
何人も侍らせて

我関せずとばかりに
涼しい顔で、さ」


学園内のまさに王様。


自分の手は
絶対に汚さない。


真っ白な
学生服に身を包んで

冷たい目。


無表情な

相手を圧倒する
その崇高すぎる姿に


「…ぞくぞくしたよ!」

「……」


中学生の頃の

私の知らない
セイのもうひとつの顔。