家では

口数は確かに
多くはなかったけれど


それでも

辛口ながらも

私のドジに
セイはよく
ツッコンできていたし。


ママのオオボケにも
明るい笑顔を
見せていたけれど。


…確かに

友達を
家に連れてきたコトなんて

一度もなかった。


「ひと目見て

もう

セイくんのあの目が
あの姿が

この目に焼きついて
忘れられなくて


また逢いたい、と思った」


だけど。


セイは
2学期の健康診断にも
やっぱり姿を現さなくて。


思い切って
通っていた小学校の
保健室に問い合わせた。


「そこで

背中の火傷の痕のコトを
耳にしてね」


形成外科は
自分の最も得意とする分野で。


実家は

世界でも
最先端の治療ができる
名うての美容整形外科病院。


「運命だと思った」


神様に感謝した、って

先生はそこまで話して
思い出し笑いを始める。


「…ごめんね
トーコちゃん。

僕は
どうしてこんなコト

トーコちゃんに
話してるんだか」


「……」

「トーコちゃんには
恥ずかしいトコ

いっぱい
見られているから、かな」


ははは、と力なく笑うと

先生は
切り分けた羊羹を

テーブルの上に置いて


「どうぞ
遠慮なく召し上がれ」


私に
お茶とお菓子を勧めた。


…2煎めのお茶は
ちょっぴりほろ苦くて

羊羹の甘さを引き立てる。