美容整形外科の
第一人者としての
プライドなのか。


それとも

意地悪なヒトを
演じきれない

いいヒトだから、なのか。


「……」

キッチンから
コーヒー豆を挽く
ミルの音が聴こえてきた。


…我が家にも
あったけど

私とママが壊しちゃって。


ずいぶん長い間
この音を聴いていない。


…そろそろ
セイがくる頃だとか

先生は思っているのかな。


ケータイも財布も
取り上げられて

カツラを脱いだ
派手なふりそで姿で

道の真ん中に
置き去りにされたセイが


どうやったら
こんな短時間で

ここまで辿りつけるのか。


あんなイカレた姿で
ひとりで
ヒッチハイクしても

どこか妙なトコロに
連れ込まれるに

決まってて。


…逆上しすぎて
判断を誤っていなければ
いいけれど。


…私のケータイにも

不気味なくらいに
着信がない。


ケータイのアンテナも
じっかり3本

立っているとゆ〜のに。


「学校のみんなも先生も

もう私が突然
学校を休むのには
慣れっこになってるのかな」


こ〜ゆ〜ときに
メールや電話を貰っても

確かに
面倒なだけなんだけど。


心配されなさ過ぎも

なんだか
みょ〜に淋しいモノでッ。


「…先生も私のコト
諦めちゃってるのかなッ」


進級のびみょ〜な時期ッ。

先生の心証を
悪くするワケには
いかなかったッ。


「トーコちゃん。

そろそろ
昼ゴハンの支度を
しようと思うんだけど〜」


何か好き嫌いある?、って
先生の声がする。


「あッ、はいッ」


私はケータイを
胸ポケットにしまって

先生がいるキッチンに
顔を出した。