キッチンの調理台には
たくさんの食材が
並べられていて。

チーズにハム。

この魚の絵が入った
缶詰は何だろう…。


どれもこれも
横文字の表記がされていてッ。

見るからに
高級輸入食材、って
カンジだった。



先生は
冷蔵庫を覗き込みながら


「トーコちゃんは
アレルギーとか
なかったよね?」


「はい。好き嫌いも
特にはないです」


「でも、コーヒーは
飲めないんだよね?」


先生が調理台から
ちょっとだけ
アタマを出して

笑ってるッ。



「…出されたら
ありがたく戴きますが

旨くは
感じないだけですッ」


「そ〜ゆ〜気の遣い方。

セイくんにも
ぜひ見習わせたいモノだ」


先生は
冷蔵庫を閉めながら
立ち上がった。


「この中から
食べられそうにないモノは?」


「……」

そんなコトを
言われてもッ。


初めて見るような
食材ばかりで…。


そんな中

「あ、これ…」

何となく
覚えがあるその食材。


「……」

これは確か

このマンションに
初めてセイと来たときに


セイが冷蔵庫から
取り出して

私に口移しで
食べさせていた

「どんぐりの味の…」

「イベリコ豚、嫌い?」

先生が私から
そのハムの塊りを
取り上げた。


「…美味しいですよね、それ」

そんな返事をする自分に
思わず赤面するッ。


「いつまでも
噛んでいたい、って

思わせるようなハムだよね」