スプリング♂011


「テツオ、おまえ
何でここに…」


私達の前で
仁王立ちするテツオさん。


いつもの
ひらひらしたお洋服ではなく

50年代のマフィアモノの
映画の中で
女優さんが着ていそうな

女性らしいラインの
ベージュのスーツ。

スーツと同色の
コサージュがついた襟元は

まあるいラインを描きながら
おおきく開いていた。


タイトなスカートに

ウエストがきゅっ、と
絞られたジャケットは

普通の日本人の体型では
とてもじゃないけど
着こなせそうにないッ。


「おまえ、また
脂肪吸引したな…」


…先生ッ。

そ〜ゆ〜ツッコミを
今、この状況で
テツオさんになさいますかッ。


「うるさいわね〜!

新人の技術向上の為に
この身を捧げたんだからッ

むしろ
副院長のアナタには
感謝をして欲しいくらいッ」


テツオさんが

人差し指を立てて
先生に反論する。


「この状況から
私の気を逸らそうとさせても

そうはいきませんからね!」


テツオさんが
先生のお皿から

生ハムだけを抜き取って

満足そうに食した後

キレイにマニキュアされた
指を

何度も舐めた。


「……」


必要以上に

オンナっぽいしぐさ
だけど


…オトコ、なんだよね。