「セイくんは
私しか頼れるヒトは
いないから、って

すがるような目で
私に頼んできたんだからッ」


「…公衆電話で
何故
そんなコトまで見える?」


「ココロの目よッ」


「……」
「……」


テツオさんって

こんなに子どもっぽい
ヒトだったっけッ。


「とにかくッ。

セイくんが
世界中の人間の中から
このアタシを選んだのは

間違いないんだからねッ!」


…それは
幾分、大袈裟かと
思われますがッ。


「それで
セイくんは
今、どこに?」


「ウチに真っ直ぐ
帰ったんじゃないの?」


…あの派手な振り袖姿で
ですかッ!?


「…セイは
研究室の実験データを
徹夜で取るから、って

ママ達に言って
外泊してるから…」


ちょっと
あのままの姿で帰るなんて
考えられないッ。


「どこかの馴染みの
ブランドにでも駆け込んで

誰かのツケで
洋服を調達して

帰ったのかもしれないな」


先生は
おもむろに電話を手に取ると

私達に背中を向けて

どこかに
電話を掛け始めた。


「…トーコちゃん。
今のうち!

家に帰ろう」