先生は
私にそう言うと

ジャケットに
イタリアの伊達男みたいに
華やかに手を通して

玄関にある
シューズ・クローゼットを
開ける。


赤、青、黄色ッ♪

どの靴見ても
キレイだな〜♪、って

歌い出したくなるような
ド派手な靴が
揃っててッ。


初夏の
レディース・シューズ
売り場でも

ここまでは
いかないだろうッ。


午前中に
履いていたモノとは
また違う

先の尖ったショートブーツ。


靴を履き替えるあたり

並々ならぬ
気合いの入り方が

こっちにまで
伝わってきてッ。


…ハッキリ言って
コワイですッ。


玄関に飾るように掛けてある
車のカギの中から

跳ね馬のデザインがついた
カギを

先生は
迷いなく選んで


まるで
恋人の元へと急ぐように

その足取りは軽やかで…。


「私も行きますッ!」

急いで靴を履いて


私はピッタリと

エレベーターに
乗り込もうとしていた先生に

横づけしたッ。


「…ついてくる気?」

「いけませんかッ!?」


私は先生のジャケットを
握りしめるッ。


「…手ブラみたいだけど

途中で僕に捨てられたら
どうするつもり?」


「あッ!!!!!」


つい
オトナが一緒だから、と
油断してッッ!!!