先生が苦笑しながら
エンジンを掛けて。
その振動に緊張するッ。
…男子が聴いて喜ぶ
エキゾ〜がどうとか、って
こういうのを
ゆ〜のだろうかッ。
乗り心地が
びみょ〜なのは
後部座席のせいなのかッ。
「…こういうのって
なんか僕の美意識に
欠けるんだけどな」
先生は
助手席に移らないか、と
作り笑顔で
私に勧めてくるけれどッ。
「あんまり
セイを待たせると
時計店から
逃げ出されてしまうんじゃ
ないでしょうかッ」
「……」
私の指摘に
先生はしぶしぶ
車を発進させてッ
「きゃッ」
わざと乱暴に
ハンドルを切ったッ!
助手席の背もたれに
しがみつきながら
先生の横顔を
恨めしい目で
責め立てる私に対して
先生は知らんぷりを
決め込んでいてッ!!!
いいオトナが
オトナ気ないですッッ!!
この寒いのに
オープンカーを
チョイスしたのも
ちょっとした嫌がらせでは
ないでしょうかッッ!!
寒々とした
この車のブルーの色は
何かの暗示だったのか。
ガタガタガタガタッ。
ぶるぶるぶるぶるッ。
芯から
凍えてしまいそうですッ。
「足元に毛布、あるでしょ」
私の蒼白っぷりに
そんなやさしいお気遣いッ
今頃
ありがとうございますッ!!
ブルーのチェックの
派手な毛布を
アタマから被って
私は暖を取っては
みるモノのッ。
「…先生はそんなスーツで
寒くはないんですか?」
「これから
愛しい者に逢いに行くかと
思ったら
この身は
業火に焼かれんばかりさ!」