先生のセリフに
身を乗り出すと


まっ黒な
でっかいボディの車が
店の前に停まっててッ。


「…店の専用駐車場には
車体が入らなかったと見える」


ってッ。


「ハイヤーって

タクシーよりも
高いんですよね?」


私の確認に


「僕はハイヤーなんて
使わないから」

この車は


「他の誰かに
用意させたんだろうね」


…先生の嫉妬心に
火がついてッ。


最悪な展開ですううううッ。


「ほらッ

他のお客さんのかも
知れないしッ」


「店のスタッフは
7百万が懸かっているんだ。

ちゃんと
ヒト払いくらい
してくれてるよ」


「もっと
高い時計を買いにきた
お客さんがいたのかもッ」


「…そんな上得意の客なら

時計店のスタッフの方が
その客の元まで出向いてる」


ああ言えば
こう返されるッ。


「……」


セレブな知識のない
私なんかに

とてもじゃないけど

太刀打ち出来る
ワケもなくッ。


先生が
まっ黒なハイヤーの後ろに

カマを掘らんばかりに
超近距離で車を停めると


時計店の前を
警護していたスタッフが
ふたり駆け寄ってきてッ。


先生の名字を
”さま”づけすると

先生から
ひとりが車のキーを預かって


もうひとりが

「お待ちしておりましたッ」

って

先生を丁重に出迎える。


「このファントム。
彼が乗ってきたヤツ?」