「店の中は
あったかいぞ」
「きゃッ」
胸元にステッキを
引っ掛けられ
「おじいちゃんッ」
私はそのまま
階段を
強制的に登らされてッ。
「いらっしゃいませ」
捕えられた
獲物のようにして
毛皮を着た狩猟民族に
店の中へと拉致されたッ。
「どうじゃ。
あたたかいじゃろう?」
「……」
煌びやかな
シャンデリアの向こうに
大理石の階段が
カーブを描きながら
2階へと続いている。
たくさんのショーケース。
2メートル毎に
スタッフが配置されていて。
みんなが一斉に
私達を見ていた。
「……」
私は
おじいちゃんのステッキを
取り外して
服装を整えるッ。
「なッ。店の中は暑かろう?」
おじいちゃんのステッキが
私のお尻をまた撫でていてッ。
「じっとり
汗ばんできたんじゃ
ないかえ?」
遠慮せず
ハダカになっても
いいんじゃぞ、ってッ。
室内で毛皮を着ている
アンタがゆ〜なッ!!!
よいではないか、と
おじいちゃんが
ショーケースの合間を
逃げ惑う私に
しつこく
食い下がってきてッ。
「どうして
私のハダカにばっかり
固執するんですかッ」
「……」
「……」
「…単なる
学術的好奇心だッ」
ってッ。
ウソおっしゃいッ!
「最初は確か
指輪がない、って
騒いでいませんでしたっけッ」