「おお、そうであった!」


どれどれ、と

おじいちゃんのステッキが

私のスカートの中を
まさぐってきてッ!!!!


「!!!!!!!」


私は思わず

反射的に
ステッキを蹴り飛ばしたッ!


「お客さまッ!!!」

ステッキといっしょに
吹っ飛んでいったご老体を

店員達が
懸命に受け止めてッ。


真っ青な顔で
おじいちゃんを取り囲むッ。


「……」


えッ。やだッ。
何ッ、この展開ッ!!


セイも先生も

いったい、どこに
消えちゃったのおおおおッ。


「くっくっく」

頭上から
漏れ聞こえてくる失笑に

私は顔を上げて


眩しい
シャンデリアの向こうを
見上げた。


「いい見世物だね〜」


セイってば

大理石のテラスの手すりに
片ヒジを乗せながら

振り向くようにして

面倒臭そうに
こっちを覗き込んでる。


「……」

声のトーンは陽気だけど

私を射抜く
その目が

笑ってはいなかった。


私と目を
少しだけ合わせた後


「…ふん」

さっき
先生に投げ渡していたハズ
帽子を

その表情を隠すように
被り直して

セイはそのまま
私に背中を向けている。