…私が抱えているこの毛皮を
セイに返してしまったら


セイはきっと

そのまま先生と
どこかへ
消えてしまうんだよね。


ぎゅううッ。


そう思ったら

絶対に
手放してなるモノか、って

私は
重量級の毛皮のコートを

力いっぱい
羽交い締めにしている。


「トーコちゃん。

マンションにまだ

テツオが
残ってると思うから」


ひとりでタクシーで
マンションに
戻れるね、って


先生が
目の前にタクシーを停めた。


「この子を
この住所のマンションまで
送ってください」


先生は
自分のプライベートカードを
タクシーの運転手に

1万円札と
いっしょに手渡すと


後部座席に押し込んだ。


「別にその娘っ子も
ワシらの遊びに同行させても

いっこうに構わんじゃろうが」


「ジイサマは
この子にセクハラするから

絶対にダメです!」


先生がおじいちゃんと
言い合いをしている間に

タクシーが走り出してッ。


気がつくと
先生にセイの毛皮まで
奪われている。