エレベーターの正面からも
先生の部屋のドアの姿が
半分だけ確認できる。
先生の部屋の
ブルーのドア。
金の縁取りが
いつ見てもいろんな意味で
濃いッ。
ドアに手を掛けると
「あれッ」
カギを掛けずに出たハズが
カギが掛かっている。
テツオさんが用心の為に
カギを掛けたのかな。
…そうだよね。
一応、見た目とココロは
女性だしッ。
いくらセキュリティーで
守られていて
お金持ちしか
住んでないからと言って
先生みたいに
マンションのドアに
カギも掛けないヒトの方が
珍しいか。
ウチなんか
盗まれるようなモノなんて
ひとつもないにも
関わらず
「アルバムとかフィルムとか
盗まれちゃったら
それこそ一大事じゃないッ」
ママは
変な心配をしているけど
そんなモノを
盗もうとするドロボーが
いたのなら
よほどのマニアか
ドロボーではなく
セイのファンの仕業だろう。
「…先生なんかも
欲しがりそうだッ」
…とにかく。
カギだけは
みんなしっかり
確認していた。
「テツオさん。
私がひとりで戻ってきて
どんな顔するかな」