今日と言う日は
なんて日なんだろう。

ことごとく
チャンスを生かせずにいて。


「…お金はあるんだもん。

まだタクシーくらいは
乗って帰れるし…」


こんな冷たい廊下に
座り込んで

待ってたって

時間の無駄だって
わかってる。


カバンもコートも
ケータイも

セイの荷物だって

きっと後で
先生が何とかしてくれるよ。


帰んなきゃ。

もしかしたら
学校からウチに
連絡が入ってて

ママが心配してるかも
しれないし…。


なのに。


どうして

私は立ち上がれずに
いるんだろう。


ボ〜ッとしたアタマで

そのまま
その場に座り込んでいると


「おいッ!

そっちから
着物が出てるぞッ」


「しッ」


…エレベーターホールから

オトコの声が
聴こえてきて。


「…?」


顔をあげると

エレベーターの前には

さっきの宅配便のオジサンと
ふくよかなオバサンが
立っていた。