スプリング♂015


「まずいッ!

エレベーターが
降りてくるッ」


「アンタッ。

ここはいいから

早く荷物を
このマンションから
運び出してッ!」


焦る
宅配便の格好をした
オジサンに

痩せたニワトリみたいな
オバサンが

冷静に指図する。


口にガムテープを
貼りつけられて

動いたら
このまま引き千切ってやると
言わんばかりに

ノド元に
オバサンの尖ったツメを
立てられていた私は

「……」

身動きひとつ
出来なくて。


エレベーターに
背中を
向けさせられていた。


…エレベーターに
誰かが乗っているコトに
期待するしかない。


できれば
定員数いっぱいのヒトが
乗っていてくれるのが
ベストだけれど


この際
贅沢は言いませんッ!


せめて

善意の格闘家が
ひとりは乗っていて
くれますようにッ…!!!!


エレベーターが
開いたら

私のコトを
おとなしい女子高生だ、と
油断している
オバサンを

払い除けて


助けを求めて

エレベーターに
駆け込めば


全ては
上手くいくハズだった。


のにッ…!!!!!


エレベーターが
開く音がすると


「あらッ。アナタ」

「!!」