素っ頓狂な
聞き覚えのある女性の声ッ。


「確か

ウチで働かせてあげている
家政婦の

ダンナだったわよね」


「……」


「リストラがどうだとか
相談に来ていた方ですよ。

先生」


これまた
聞き覚えのある…。


「あら、じゃあ宅配便に
就職が出来たんじゃない。

よろしかったコト」


「先生のアドバイスの
おかげですよね」


「そのようね」

お〜ッほほほほほ、と

高笑いする
この高慢な女性ッ。


あの大正ロマンに

間違いないッ。


「さすが先生です」


クールなトーンで
調子よく

大正ロマンの
太鼓持ちしているのは


てんとう虫みたいな車を
運転していた

オタッキーな

赤フレームの
メガネっこかッッ。


…どうやら

宅配便のオジサンと
大正ロマンは
顔見知りみたいだけど…。


「……」

私の喉元を脅している
オバサンの


…カラダが震えている。


さっきまで

どちらかと言うと
エラそうに見えていた
オバサンが


声のする方に
背中を向けたまま

息を潜め

ちいさくなっていて。


「また困ったコトがあったら
いつでもいらっしゃいな」


大正ロマンのそんな声に


「くッ」

オバサンが唇を噛んだ。