「あの真っ赤な振り袖を着た
お綺麗な方は
いっしょじゃ
ないのかしら?」
「……」
そお〜っと
私は
大正ロマンの顔を見上げた。
「まあ!
お口にガムテープが
よく似合ってるわね!」
イヤミ、イヤミ
すっごいイヤミッ!!!!
「申し訳ありませんッ!
先生のお知り合いだとは
知りませんでしたのでッ」
オバサンが慌てて
私の口から
ガムテープを外しにかかる。
「ああ。可愛らしいから
そのままでいいわ」
お茶にするから
その子も
連れていらっしゃい、って
大正ロマンが
細い目を一層細めてッ。
何なんだッ。
この展開ッッッ!?
気がつくと
台車に乗せた荷物ごと
宅配便のオジサンが
消えていてッ。
「うぐぐぐぐッ」
離してください、って
必死に抵抗しても
ガシッ。
ガリガリのオバサンと
オタッキーなメガネっこに
両脇を抱えられたッ。
エレベーターホールを
宅配便のオジサンが
出入りしていた方の廊下に
向かって
大正ロマンの後を
従順そうに
私を連れたふたりが
歩いていくッ。
…いったい何が
どうなっているんだかッ。