…嫌なニオイ。

煙がちょっぴり
鼻にくるッ。


普段は
ここまで嫌だとは思わない
タバコのニオイも煙も

このヒトの
カラダの中から
出てきたモノだと
思うだけで

その不快さに

自然に眉間にも
チカラが入ってしまうッ。


「お座りなさい、って
聴こえなかったの?」

「……」

私は
大正ロマンの正面の席に
腰を掛けた。


「ああ。

もうこの子を
押さえていなくていいわ」


アナタも
ちゃんと着替えて
仕事に戻りなさい、って

私のカラダを
イスに押さえつけていた
オバサンに命令する。


「…はい。先生」

スパンコールのついた
派手なTシャツを着ていた
オバサンは

不安そうな顔を
私にチラリ、と見せながら


カラ、コロと

ドアのベルを鳴らしながら
カフェスペースから
出て行った。


「ねえ。私がいないときも

ちゃんと制服を着て
仕事をするように

徹底させておきなさいよね」


顧客にキャンセルの
お詫び電話を入れている
メガネっこを

叱ってるッ。


メガネっこも

電話の相手に
大正ロマンの声が
聴こえないよう

しっかりと
受話器を手で覆ってて。


あっちにペコペコ。
こっちにペコペコ。


…大変だッ。