大正ロマンがテーブルの上
私の手が置かれていた辺りを
指さして。
「え?、じゃないわよッ。
これッ!!!
どうしてくれるのッ!!!!」
…そこには
ちいさな黒い焦げ跡が…。
私がさっき
掃ったタバコの火が
おそらく
作ったモノと思われ…。
「アンティークなのよッ!
二度と
手に入らないんだからッ」
大正ロマンは
追及の手を
緩めようとはしなかったッ。
だからといって
「…他にもいっぱい
タバコの火の焦げ跡が
ありますけど」
なんて
要らぬツッコミ
だった、って
後悔しても後の祭りで。
「歴史上の人物がつけた
焦げ跡と
一般市民以下の
アナタがつけた焦げ跡を
いっしょになさる気ッ!?」
「…歴史上の、って」
あは、あはは…。
そんないわくのある
由緒あるテーブルだとはッ。
知ってても
避けられない事態では
あったけどッッ。
って、ゆ〜かッ!
元は、と言えば
大正ロマンッ。
アナタが
私の手を
灰皿にしようとしたり
しなければッッ!!!!!
言い返したいコトは
いっぱいあったけどッ
言い返したら
屁理屈で返されるのは
目に見えていたから
あうあう、と
ただ悔しさに震えるのが
精一杯で。
「先生。
お茶をお持ちしましたよお」
銀のトレイに乗せて
コーヒーを運んできた
メガネっこに救われる。