他のオトコの
子どもなんだろう、って


「父が母に追求しただけで

母は妹を連れて
家を出て行ったの」


ってッ。


それって
もしかしてッ。


身に覚えもない不義を
疑われたお母さまが

ショックを受けて


もうこのヒトとは
連れ添えない、って

三行半を突きつけて
出て行ったのでは…。


…なんて。

とてもじゃないけど
言い出せない。


「……」


かくいう私だって。


セイが
パパが他のオンナに
産ませた子だ、って

聞いたときには

そりゃあ
動揺もしたし。


パパのコトだって

鼻っから疑って
かかっててッ。


…他人のコト
言えないけどさッ。


信じてあげて
欲しかった、かな。


血の繋がりよりも

お互いを信じ合う
いたわり合う
気持ちこそが


家族という
繋がりなんだ、って。


だけど。


「ここで働いている
人間全てが

先生の偉大なお力に
救われた者ばかりなのよ」


「……」

そんな風に
疑うコトもせず

信じきっているこのヒトに

何を言っても
無駄なのかもしれなくて。


「さっき会った
家政婦なんか

昔は凄い羽振りのいい

上流階級のご婦人
だったのだけど」