ご主人の会社が
倒産しそうになったとき
「困りに困って
ここに相談に来てね」
大正ロマンからの
アドバイス。
「絵画や美術品などは
私が高く買って
差し上げましょう」
さらに計画倒産させて
多額の借金が
夫婦にかからないように
したのだ、と
メガネっこは
大正ロマンの
情け深いその功績を
自慢げに讃える。
…よくわからないけれど。
何だかとっても
ウサンクサイ臭いがしてッ。
凄いですね、と
愛想をふりまくコトは
出来なかった。
それでも
空気を重くは
させたくなかったから
取りあえず
作り笑顔で、ニコニコと
話を聞いていたからか。
「コーヒー飲むでしょ?」
メガネっこは
とても機嫌よく。
「…あ、はい」
コーヒーって
ストレートでは
飲めない、なんて
そんなコト
とてもじゃないけど
言い出せなかった。
…クスリだと思って
飲めば…。
そう決死の覚悟で
臨もうとしたのにッ。
カンコロカンコロ!
バンッ!!!!!
「ちょっと!
私の結城紬に大島紬ッ!
エメラルドの指輪が
見当たらないんだけどッ」
凄い勢いで
大正ロマンが
戻ってきてッ。
…コーヒーで
またテーブルを
汚すトコだったッッ!!!!
「紬、って先生。
クリーニングに出したとか」
「結城紬に大島紬よッ!?」
「…京都の着物クリーニングに
確認してみます」
メガネっこが
受話器を手に取った。
「エメラルドの指輪は…!」
「先週のレセプションで
身につけて
いらっしゃいましたけど」
「今朝はあったのよ!!!」